【名前】
キャロル
(本名:キャロル・レイダ・メイフィールド)
【年齢】
17
【性別】
女
【所属】
マジェスティ・オブ・ディストラクション(M.O.D)
【性格】
いつも控えめな微笑を湛えている落ち着いた雰囲気の淑女。
その所作は洗練されており、真っ当な教育を受けてきたことを窺わせる。だが親交のある人物の前では言動の端々に若干の子供っぽさが滲んでしまう。
裏の世界で生きるにはその心根は善性に偏っている。相手を傷つけなくて済む手段があるのなら、手を煩うことになってもその手段を選ぶことを厭わない献身的な姿勢を見せる。
与えられた職務には忠実で基本的に否を唱えることはない。ただ、彼女の“家族”を害するような働きかけには強い反発を見せる。彼女にとって“家族"は守りたい居場所であり、心の拠り所としているのが理由として大きい。
もとより“怒る"という行為が苦手で、負の感情を溜め込みがちな面がある。彼女の強い反発は溜め込んだ感情を引き金に突飛な行動へと走らせることがあり…大抵それは、取り返しのつかない事態を招いてきた。
それでも彼女は、置いてきたものを振り返りながら、前に進むのだ。
【容姿】
チェンバーメイドに似た給仕服が彼女のデフォルト。ヘッドドレスから黒のエプロンドレスの裾までふんだんにレースをあしらい、動く度にはためくフリルが少女らしいシルエットを作り出す。白黒で構成される制服の中で唯一、胸元のリボンだけは桃色の春めいた彩りを取り入れている。足元にも気を遣っているらしくラウンドトゥの革靴には汚れ一つない。
女性というには些か幼い顔立ちをしている。丸い輪郭の頬、ぱっちりとした緑眼の無垢な眼差し、そのあどけなさが彼女により強く少女めいた印象を与える。光を受けて明く照り返す深紅の髪は肩に届く長さで切り揃えられ、左右に跳ねた横髪は動物の耳を思わせる造形をしている。例えるなら、たれ耳の犬に近い。
まだ未熟さは残るもののスラリと伸びた手足は健康的な肌色をしている。手の甲や服に隠れて見えない部分には薄くなったがミミズ腫れのような傷跡が残っている。
均整の取れた身体は身軽で、物で溢れた路地裏の悪路をたやすく踏破する身体のバネと俊敏性を秘めている。しかしその身軽さは転じて耐久性に乏しく、力で抑え込まれれば抵抗するのも難しい。
彼女はどこにでもいるような、非力で、けれども強かな、ただの少女だ。
【持ち物】
《使い古された旅行鞄》
最低限の着替えと衛生用品、身だしなみを整える手鏡などが一纏めにされたレトロなトランクケース。自然な革色の持ち手には目印のように桃色のリボンが固く結ばれている。最低限の所持金は巾着袋の中に入れ、エプロンのポケットにしまっている。
《日記帳》
旅行鞄にしまわれた2冊ある日記帳。1冊は赤い装丁の古い冊子で紐に括られて容易に開けないようになっている。もう1冊は青い装丁の安っぽい冊子で彼女がひとりになってからの出来事が綴られている。彼女の能力についての検証結果も走り書き程度に記されているため、紛失は能力の概要を開示することと同義である。
《銀のカトラリー》
花嫁道具の一つとして持たされたもの。丁寧に手入れが為されているが、純銀ではなく混ざりもの。そのため鉄に近い強度をもつ。
彼女が能力を発露させるほどに強い殺意を抱いた時に握った最初の武器で、今も使い続けている大切なお守り(懐刀)。あくまでカトラリーの域を出ない作りのため、不意を突いて急所を狙わなければ致命傷を与えることはできない。基本的にエプロンドレスの隠しポケットにしまわれている。
《テグスロープ》
人毛とそれを模した特殊な繊維によって編まれたロープ。使用されている人毛はかつての主人がコレクションしていたもので、彼女自身の髪の毛も含まれている。
ロープの大元となっている繊維は人間を縛って吊り上げても問題ない程度の強度があり、主に能力でしまうものをまとめるために利用している。彼女がこれを持ち出したのは証拠隠滅のため。
普段は両手首のハンドカフスの下にぐるぐると巻きつけて見えないように持ち歩いている。手首数十周分の長さがあるため、場合によっては拘束や首への圧がけに使用することも。あんまりやりたくはない。
基本的に所持しているもの以外は現地調達か支給されたものばかりである。
もし抗争に巻き込まれるような事態になれば、直接の戦闘には参加せず秘密裏に物資を持ち込むといった工作要員として動くことを想定されている。
【能力】
《Monster in the frills》フリルの中の怪物
彼女が初めて“殺意をもって”人を殺めた時、スカートの中に住みついた“怪物”。あらゆるものをその身に飲み込み、留め、吐き出す空間の“歪”のようなもの。
一見してただのロングスカートの、折り重なったフリルの影からは“怪物”の無数の目玉が覗いている。この目玉は能力者にしか見えず、能力者ではない人間からは普通のスカート(なお太ももの途中から上はどう捲くっても見えないようになっている。真っ暗)にしか見えない。能力者であっても、わざわざ彼女のスカートを捲くり上げない限りは“怪物”の全容を目にする機会はないだろう。
“怪物”は彼女自身の能力により生まれたものと考えられているが、能力の使用者である彼女と意思の疎通が取れるようなものではない。加えて、“怪物"の機微は能力を初めて発現させた時のような“強い感情"に左右されるようで、本来のものを自在に出し入れする能力は“怪物の捕食行為"という形で制限されてしまっている。
“怪物”にできることは2つ。
1つ。スカートで覆える大きさのものをその身のうちにしまうことができる。直径にして約1メートル程。多少の高さがあるものはしまう時に工夫が必要。一段高い場所から飛び降りるとか。要はスカートが広がった1メートル範囲内かつ“怪物”に視認されたものは、例外なくしまわれてしまうのだ。
2つ。スカートにしまった“モノ”を“好きな時”に“好きな場所”へ吐き出させることができる。カーテシーにより広げたスカートの裾から、あるいは風にフリルを靡かせた瞬きの間にしまったものを取り出せる。もちろん重すぎて彼女の手に持てないものは床に落としてしまうし、長物は取り出す方向を間違えると床や壁にぶつかってしまう。
また、吐き出す先を指定する場合“彼女が一度赴いたことのある場所"に限定される。吐き出した対象が人間などの生き物である場合、それが大きく損なわれるような場所には出せない。
ここまでなら鞄いらずの夢のような能力だが、この能力の核は彼女に寄生する“怪物”であることを忘れてはいけない。
意志を持ったが故に、怪物は気まぐれに、躊躇いなく、その身にしまい込んだ“モノ”を捕食するのだ。
怪物が“捕食”すると判明している条件は2つ。
1つ。スカートにしまう個数の最大値が4つを超えること。
この場合、最大値を超えてしまったものは“吐き出される”か“食べられて”しまう。個数制限は一日ごとに更新され、既に入れていたものと交換で新しいものをしまうには丸一日の時間経過を要する。
1d100で50未満で吐き出し、50以上で捕食。出目50以上で捕食される場合は出目が大きいほど捕食完了までの猶予が生まれ、対象となった相手は最大で2ロル分の抵抗を試みることができる。例えば、人間が即死する相当のダメージを怪物に与えたり、何らかの能力で怪物の活動を止めると、対象は“武装を解除された状態”でその場に吐き出される。もし捕食完了までに怪物へ有効打を打てなかったら、対象は即座に気絶して丸一日“しまわれた状態"となる。
また、出目50以下で吐き出される場合は任意で指定できる移動先のうちのどこかランダムとなる。なお、出目が小さいほど使用者である彼女からは離れた場所に出るため、一か八かの逃走手段につかえる、かもしれない。
2つ。“人間"を3回しまうこと。
個数の制限に関わらず5ロルの間に3回人間をしまった場合、3度目にしまわれた人間は“怪物”により捕食されてしまう。この時捕食された対象は1d100を振り、出目が大きいほど捕食完了までの猶予が生まれる。猶予は1つ目と変わらず最大で2ロル分。その後の捕食完了までの条件も1つ目と変わらない。人間を捕食すると怪物は眠り、ものをしまうことも出すこともできなくなる。丸一日経過すると怪物は再び目を覚まし、能力も使用できるようになる。
一番最初にしまったものは、頭以外は何も残らなかった。
しかし、今の“怪物"が人を一方的に殺めるような形になっていないのは、彼女が抱いた殺意の裏に『逃げ出してしまいたい』という“恐怖"が重なっていたことに他ならない。人を殺してしまったという事実、それを隠さなくてはいけないという強迫観念。
“怪物"がフリルに身を潜めているのも、実際は彼女の“恐怖"の表れなのかもしれない。
(完全に余談だが、彼女が身につける下着も能力の個数制限にカウントされるらしい。しかし、彼女は「安全にしまえるのは4つまで」という。)
(つまり……?)
【過去】
メイフィールド子爵家の三女として生を受け、貴族の末端ながらも十分に教育を受けたれっきとしたお嬢様。家族からは末の娘として可愛がられ、彼女自身も家族を愛して順風満帆な日々を過ごしていた。それが彼女が幸せだった時の思い出。
契機となったのはとある上級貴族から婚姻の申し出を受けた時。家柄の格の違いもあり、適齢期よりも若い13でその貴族の元へと嫁ぐことになった。が、彼女がその家で妻としての待遇を受けることはなかった。女中と等しい、あるいはそれ以下の愛玩動物として扱われ、貴族としての矜持を、彼女自身の尊厳を踏みにじられた。
それでも彼女は耐えた。主人には横暴を許される権力が、地位があった。加えて、彼女と同じような立場に堕とされた令嬢たちを何人も見てきた。その身の振り方によって自らの家にどんな仕打ちが及ぶのか。考えつかないほど子供ではなかった彼女は耐えて、耐えて、主人の振る舞いを許し____
『……許せるわけがない』
ある日、彼女は花嫁道具に含まれていた《銀のカトラリー》を隠し持ち、主人の寝室へと赴いた。従順で愛らしい妻。なんでも言うとおりになる愛玩動物。そんな彼女が主人に逆らうだなんて夢にも思わなかったのだろう。彼女は油断しきった主人の顔面にフォークを突き刺し、仰け反り顕になった首元をナイフで引き裂いた。
そうして呆気なく、“元”主人は絶命した。
彼女は血に濡れた凶器を握り、しばらく立ち尽くして……絶望に喉を詰まらせた。
『こ、ろして……しま……っあ、ぁ……どう、し……もし、これが……』
“世間に知られてしまえば?"
表向きは何の問題もない“元"主人が死んだと騒ぎになれば、疑いは必ず配偶者となった彼女自身に向くことは容易に想像がついた。その事実が行き着く先は、彼女が最も忌避していた事態につながる。
そこまで考えて、意味もなく彼女は死体のそばにひざまづいた。
瞬間。風もなく彼女の服の裾がはためいた。真っ白なフリルは物言わぬ肉の塊を覆い、一つ、瞬きの間にそれを消し去った。シーツに飛び散った血痕さえなければ、はじめから“何もなかった”かのように。ありえない事態に止まっていた思考は、直観的に答えを導き出した。
『…………怪物、に』
呟いて顔を下に向ける。覗くフリルの影から無数の目玉と“視線がかち合った"。
そこで、これをやったのは“自分自身"であると、理解する。
理解した事実を飲み込んで、彼女は決意をした。
自身の罪を誰にも明らかにせず、表から姿をくらますこと。諸共真相を闇に葬ることで、大切な家族と罪を犯した彼女自身がもう関わることがないように。
その後、とある貴族の屋敷からその主人と妻が忽然と姿を消す事件が紙面に上がった。
一時は噂となったその事件もいつしか新たな噂に塗りつぶされ、ついに忘れ去られてしまった。
***
置き去りにした過去。二年の月日が経った今も、その事件について追い続けている者がいた。
その存在を、彼女はまだ知らない。
(__I'm at the end here.)
【備考】
□掃除
綺麗好きな彼女は身の回りを清潔に保つことを忘れない。奇しくも掃除は嫁いだ先でさんざやってきたところだ。不要なものを捨て、必要なものには住処を充てがう。それだけで見違えるほどに部屋は整う。あとはちょっとしたインテリア、小瓶に花でも生ければ十分に見栄えする空間が完成する。
心安らぐ部屋を整えるのも、メイドの務めである。
□キャンディ
ポケットにしまった小さなご褒美。昔から変わらない優しい味。ひとりが寂しい時、過去の疵に苛まれる時、“幸せな女の子だったこと”を思い出せるように。
ころんと、キャンディを一つ口に含む。その中でひろがる甘さを噛みしめるのだ。
□花壇の世話
綺麗に掃除した部屋に飾り付ける花を育てている。季節によりその花々は変わり、余った花は教会などに届けることも。一日の決められた仕事が終われば、まず花の手入れをしていると言っても過言ではない。彼女専用のジョウロもこっそり庭に隠されているらしい。
□蝋燭の火
密室にユラユラと不安定な影を作る炎。薄明かりから無遠慮に伸ばされる手。執拗に辱めを受けるならいっそ、何も見えなければよかったのに。今はもう、薄明かりよりも完全な暗闇に安堵するのだ。
そんな過去に負った疵(トラウマ)は、未だ彼女の柔らかい部分に残り続けている。
□Flavor
誕生日:1/18
誕生花:雪割草(ミスミソウ)
カラー:聴色 #F3A1B2
□イメージソング:
『地球の裏』 いよわP
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「暗いところで息をする。怪物と一緒に」
「私は、そういう選択をしました」
『頬が乾くまで』いよわP
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「愛しさを抱えていたいから、どうかこのままで」
「晴れの日を待っているの」
【関係募集】
・旦那様/ご主人様
植え付けられた奉仕精神を供するため、彼女の身分を偽るための隠れ蓑として選ばれたのが貴方だ。個人としてよりも“召使い”として扱うような人物であっても構わない。あるいは彼女の持つ“能力"の方がメインで、彼女はオマケだとか。それくらいが望ましい。
下手な情念を向けられる方が、彼女にとってはよっぽど胃が痛い事案だ。これまでにだって片手に収まらない数の“ご主人様”の元から逃げ出してきているのだから。
いっそ、そういう星の元に生まれついてきてしまっているのかもしれない。
・姉のように慕っている
彼女には姉がいた。今はもう会うことのできない、親愛なる家族。まだ子供とも言える幼さで家を離れ、縋る相手すらいない中じっと耐え続けた記憶は計り知れない寂しさを彼女に与えた。
故に、そんな家族の記憶を思い起こさせるような貴方に対し、彼女は姉としての親しみを向けるようになった。貴方が相手であれば、彼女はその身を尽くして力になろうとする。
あくまで、彼女自身の“家族"を害しない範囲に限られるが。
・真実を追う者
彼女が過去に起こした事件について、何某かの縁があって調べているひと。
動機や経緯はともかくして、その調査によって彼女につながる何かをいづれ見つけるでしょう。その暁に彼女と対峙する日も、そう遠くはないのかもしれない。
【SV】
「お初にお目にかかります、旦那様。私はキャロル。ご覧の通り、今は仕える主なき一介の召使いにございます。今後の宿と食事を対価に、どのような雑事も熟しましょう。例えば?たとえば……部屋のお掃除、とか。えぇ、そうですね。お片付け、得意です。不要なものの処分もお任せを。片付けがおわった暁には、きっとご満足いただけるお部屋になっていることでしょう。どうぞ、ご検討くださいませ」
「旦那様。先程、たいそうお冠な御婦人がを探しておいででしたが……そのお顔からして、旦那様にも非があるご様子。ほとぼりが冷めるまで、一度姿をお隠しになってはいかがでしょう。さ、こちらに。目を覆って……えぇ、何を見るとも限りませんから。そのまま動かず、蹲う前に立つ無礼をお許しくださいませ。____あぁ、ご安心を。まだ一回目です」
「今でも、夢に見るの。何も知らなかった、幸せな女の子だった頃の夢」
「もう戻れないこの記憶だけが私の拠り所。私がまだ、泣ける理由」
「だからね、苦しくてもいいの。……未練がましく、生きていたいから」